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自己破産の場合「退職金・確定拠出年金」はどうなってしまうのか?

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自己破産・個人再生|退職金・確定拠出年金などの取扱い説明書

自己破産・個人再生|退職金・確定拠出年金などの取扱い説明書

2021/05/20

退職金というものは、退職したらもらえるお金ですよね?

 

でも、自己破産や個人再生の手続きでは、

未来にもらう予定のお金も影響を受けることをご存知でしょうか?

 

なぜなら、本来返してもらえるはずのお金を諦めなくてはならない債権者に少しでも配当することを法律では考えているからです。

 

僕も弁護士として、退職金の換価や清算価値への計上をせねばならない時には、なかなか心が痛いものです。

 

この記事では、退職金の取扱いと確定拠出年金などの退職してからしかもらえないお金についての取扱いを解説していきます。

 

この記事の結論は…
・退職の時期によって、対象になる退職金の割合が変わること
・影響を受けない退職金の話

 

それぞれ解説します。

目次

    破産者・再生者には、退職金の報告義務がある

    裁判所に出す資料の中に「退職金について」があります。

     

    この退職金に関する資料は、今は、20代で受け取るのは、40年ほど先という場合でも必要となります。

     

    今受け取らないから、無関係なもの…とはできません。

     

    今、退職したとしたら、退職金はいくらあるのか?というのが問われるのです。

     

    この退職金のうち8分の1が対象となります。

     

    ★自己破産では、20万円を超える財産を換価処分する必要があるので、対象となるのは、退職金の支給予定額が160万円を超えた場合です。

     

    ★個人再生では、8分の1が清算価値として扱われることになります。

     

    ネット上に出回っている話には少し誤解があるようなので、僕が弁護士としてきちんと説明したいと思います。

    退職金見込額を提出しなければならない人とは

    まず、退職金を未来付で受け取る人には、どのような義務があるのでしょうか?

     

    ×ネット上の誤った解説
    勤続年数5年未満の正社員には、退職金見込額を報告する義務はない。

     

     

    正しい解説
    勤続年数5年未満であっても、退職金見込額を報告する義務があります。
    当事務所では、1年目の方でも提出していただいております。

     

    退職金をもらう見込のある方すべてが対象となります。

     

    この証明書のことを

    退職金見込額証明書といいます。

     

    どのように証明するのかいうと、以下の書類が用意できれば問題ありません。

    ・雇用契約書に記載があれば、コピー
    ・給与明細書に記載があれば、コピー
    ・就業規則に記載があれば、コピー

     

    いずれにも該当しない場合

        

    雇用契約書、給与明細書、就業規則のいずれにも書かれていない場合やもらえるが不明瞭な場合は、会社に申出て「退職金見込額証明書」を発行してもらう必要があります。

     

    会社に申出る場合は「住宅ローンを組むために必要なので、退職金見込額証明書をください」と話していただくと、会社から怪しまれずに書いてもらうことができると思います。

    退職金をもらうことがない人はどうなるのか?

    勤めている会社に、退職金制度がない場合には

    「退職金がない」という証明が必要です。

     

    ・雇用契約書

    ・就業規則

     

    どちらかに記載があれば、そのコピーで大丈夫です。

     

    また、パート、アルバイト、派遣社員の方は、退職金がない場合が多いため、特に資料を添付する必要はありません。

     

    しかし、稀にパートでも退職金がもらえる会社もあります。

     

    退職金があることを知っていて、隠す行為は、違法行為とみなされてしまいます。

     

    つまり、手続きも失敗に終わることになるので、嘘の申告だけはしないでください。

    すでに受取済みの退職金がある場合、または退職金の受取りが近い場合

    <もうすでに退職金を受け取っている場合>

    自己破産・個人再生のどちらの手続きにおいても、全額が換価の対象または清算価値として計上されます。

     

    <退職金の受取りが近い場合>

    ・自己破産では、全額または裁判所の指示で割合が変わります。

    ・個人再生では、3年以内の退職が決まっている場合は、全額が清算価値に計上されることになります。

     

    主に、個人再生では、退職金の受取りが近い方は、定年退職を控えている方が対象となります。

    理由は、安定した収入があることが前提の手続きとなるため、若い方の無職になるケースでは、手続きを行うことができません。

    確定拠出年金などはどのような扱いになるのか?

    退職金制度に代えて確定拠出年金を取り入れている勤務先が増えてきています。


    退職金も確定拠出年金も老後の生活保障を目的としたものに変わりはありませんが、退職金は年齢に関係無く、退職時に支給されることに比べ、確定拠出年金は原則60歳から年金若しくは一時金という形でしか受け取れません。

     

    その性質は公的年金に準ずるところがあり、最低限の生活の維持及び精神生活の尊重等の観点から、確定拠出年金法32条1項で確定拠出年金は差押禁止財産とされています。


    更に、破産法34条3項では差押禁止財産は破産財団に属しないとありますので、自己破産をしても、個人再生をしても、確定拠出年金は手をつけずにそのまま残せるということになります。

     

    <その他同類として扱われるもの>
    ・中小企業退職共済制度
    ・小規模企業共済制度
    ・確定給付企業年金
    ・社会福祉施設職員等退職手当共済
    ・厚生年金基金
    ・公務員共済等


    これらのものは、差押禁止財産とされています。

    まとめ

    あなたは、どこに当てはまりましたか?

     

    【結論は…】
    ・退職の時期によって、対象になる退職金の割合が変わること
    ・影響を受けない退職金があること

     

    自己破産|退職金は換価処分の対象、でももらってないものは払えない!

     

    個人再生|清算価値が多すぎて減額ができない場合の唯一の対処法

     

    それぞれの記事も参照ください。

     

     

    その他、お困りごとがある場合は、当事務所までお問い合わせください。

     

    いつでもお待ちしております。

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