自己破産手続きと交通事故の示談金の取り扱いについて
2021/05/08
誰だって、好き好んで事故に遭うわけでも、起こすわけでもないのですが、こればかりは、どうしようも避けられない状況に見舞われることがありますよね。
しかも、運が良いのか、悪いのか…自己破産の手続きの途中で交通事故に遭ってしまうということがあります。
その場合は、受け取れる損害賠償金や示談金は一体どのように扱われるのでしょうか?
例えば、脇見運転の車に轢かれて全治1か月の大怪我をしたという場合で考えてみます。
自己破産手続き中、示談金を受け取ることはできるのか?
事故から2か月後に保険会社から慰謝料や休業補償、治療費などで合わせて100万円の示談金が振り込まれたとします。
この100万円は自己破産の手続きとの関係でどうなってしまうのでしょうか。
事故に遭った日が自己破産の開始決定の前後によって全く取り扱いが異なってきます。
注意しなければならないのは、100万円が振り込まれた日とか、保険会社との間で示談が成立した日ではなく、事故に遭った日という点です。
自己破産手続きの開始決定がカギを握る
自己破産では、破産手続の開始決定日時点にある財産が換価といってお金に換えて債権者へ配当される対象になります。
開始決定時点の財産が対象なのですが、財産には請求権も含まれます。
交通事故の示談金は、その性質が不法行為に基づく損害賠償請求権です。
開始決定時点で、その「請求権」が有ったか無かったのかが問題になるのです。
開始決定の1分でも事故に遭ったのが前であれば、不法行為に基づく損害賠償請求権という財産が、開始決定時点で存在したことになるのです。
なので、事故に遭ったのが開始決定時点(開始決定書には時刻も記載されています)の1分でも前であれば、100万円全額が没収となり、債権者への配当に当てられてしまいます。
逆に事故に遭ったのが開始決定時点の1分でも後であれば、没収の対象とはならず、100万円全額を取得することができるのです。
まとめ
あなたが痛い思いをする交通事故なのに、開始決定のタイミングによっては、その示談金が没収されてしまうのは、不運にもほどがあると思われることでしょう。
ですが、命があるお陰で、また新たな人生を再出発していけるので、ポジティブに考えていけることを願います。
僕たち弁護士もあなたの味方となって、こんな時には、どうしたらいいのかということを提案できるように、日々奮闘しています。
法律で決まっていて、どうにもならないこともありますが、そこを上手に活用できるように考えていくのが僕たち弁護士の腕の見せ所であると思っています。