自己破産「債権者に現住所を知られたくない」その意向は通るのか?
2021/08/05
自己破産をする場合で、金融会社だけでなく個人からの借り入れもある場合、その個人とは人的なつながりがあるため、現在の住所を知られたくないということがります。
弁護士から通知が送られたとしても、個人的なつながりから直接訪問を受けて債権について請求を受けたり、説明を求められたりするおそれがあるのです。
ただ、債権者に現住所を知られないようにするのはかなり難しいです。
破産手続が開始されると、裁判所から各債権者へ破産手続開始決定書というものが郵送されますが、そこには破産者の住所が記載されているからです。
ここで、現に寝起きしている住所と住民票の住所が異なるため、裁判所へ出す住所としては住民票記載の住所を住所として届け出て、現に寝起きしている住所は記載しないで欲しいという方がいらっしゃいます。
自己破産ではこれができないのです。
自己破産の申立書に記載する住所は、住民票記載の住所ではなく、現に寝起きしている住所を記載しなければならないとされているからです。
現に寝起きしている住所を、現に寝起きしていない住民票の住所として記載することは破産申立書に虚偽の事実を記載することになってしまいます。
そうすると、申立書への虚偽記載として、免責不許可事由に当たってしまいます。
最悪、これが原因で免責が不許可となり、せっかく自己破産をしたのに、借金が全部残ってしまったということになりかねません。
ここでさらに、申立て時点で現に寝起きしている住所を申立書に記載し、申立て後に移動することによって現在の所在が知られることを回避しようとされる方がいらっしゃいます。
申立て後でも、現に寝起きしている住所が変更になった場合には、裁判所に上申書を提出して届け出る必要があります。
その場合、確かに破産手続開始決定書に記載されている住所は、1つ前の所在地ですが、破産法は、利害関係人については裁判所に提出された書類の閲覧・謄写ができるとしています。
債権者は利害関係人に当たるため、現在の所在についての上申書を閲覧できることになります。
結局、債権者に現在の所在地を隠すのはかなり困難であるということになります。