個人再生をする場合「慰謝料や養育費」を支払っているとどうなるのか?
2021/07/02
個人再生は債務を減額して、総額の一部を支払い、残りを免除してもらう手続です。
しかし、債務の種類によっては、減額することが出来ないものもあり、これを「非減免債権」と呼んでいます。
以下の請求権は非減免債権とされています。
①再生債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
②再生債務者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
③夫婦間の協力及び扶助の義務、婚姻から生ずる費用の分担の義務、子の監護に関する義務、扶養の義務に係る請求権
よくある事案としては、③の子の監護・扶養にあたる養育費です。
なお、養育費でも個人再生手続開始決定前までに支払時期が到来している未払養育費と、個人再生手続開始決定後に発生する養育費とは扱いが異なります。
個人再生手続開始決定前までに支払時期が到来している未払養育費
未払養育費は非減免債権となります。
ただし、非減免債権も他の借金と同様に再生債権であるため、再生計画に沿った返済をする必要があります。
例を上げてみましょう。
養育費は月3万円、個人再生手続開始決定前までの未払分は合計30万円、再生計画による免除率が80%の場合
再生計画履行中(3年間)は30万円のうち、6万円(20%分)を分割で支払います。
6万円÷36回(3年)で月々は1666円程です。
残りの24万円(80%分)については、再生計画が完了した時点で一括払いとなります。
個人再生手続開始決定後に発生する養育費(これから支払う予定の養育費)
開始決定後に毎月発生する養育費については、「共益債権(個人再生手続に影響されずその都度返済可能)」とされているため、個人再生をしても、相手方と合意した内容通りの支払いを続けることになります。
慰謝料についてはどうなるのか
また、養育費に続いてよくあるのは離婚の際の慰謝料です。
慰謝料が非減免債権にあたるかどうかは上記①に該当するか否かによります。
慰謝料の内容が、①再生債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権に該当する場合には非減免債権となり、未払養育費と同じように扱います。
例えば慰謝料200万円、再生計画による免除率が80%の場合
再生計画履行中(3年間)は200万円のうち、40万円(20%分)を分割で支払います。
40万円÷36回(3年)で月々は1万1111円程です。
残りの160万円(80%分)については、再生計画が完了した時点で一括払いとなります。
なお、慰謝料が再生債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権に当たるかどうかの判断は個人再生手続内では行われません。
争いがある場合には別の訴訟によって裁判所の認定を仰ぐことになります。