自己破産・個人再生「親が作った口座・保険」の取扱い方
2021/05/15
自己破産の依頼を受けたときには、負債のほかに、財産も全て申告しなくてはなりません。
自分にはめぼしい財産は無いと思っていても、親が自分名義の口座に貯金をしていた、親が自分名義で生命保険を契約していたという事例が多々あります。
破産手続きは負債も財産も無くなる手続きですから、
この自分名義の財産がどう扱われるかが気になるところです。
今日は、その疑問について説明します。
「誰の財産なのか」に
焦点を当てる
今回の論点のキーワードは、裁判所が見ている視点
「誰の財産なのか」というところに注目して考えていきましょう。
目次
預金口座の場合
預金の出捐者(しゅつえんしゃ)が誰かということに加え、
・口座の開設者
・開設の経緯
・預金通帳及び印鑑の管理
・預金の出し入れ状況等から総合考慮したうえで、
裁判所が誰の財産になるのかを判断することになります。
※出捐者(しゅつえんしゃ)とは
自分のお金を出資して、他者のために使う人のこと
出捐者(親)が出捐者自身のために子名義の口座を利用していただけで、口座名義人(子)に預金の存在すら知らせなかった場合には、預金は出捐者である親の財産と認定される可能性がありますが、これを立証することは簡単ではないため、実務では中々認めてもらえないのが現状です。
一方、出捐者(親)が口座名義人(子)のために預金をしている場合には、
預金は口座名義人(子)の財産として認定されることとなります。
(自己破産の場合)
口座名義人(子)の財産だとされた預金は、一定の金額を超えると破産財団に組み込まれて、債権者への配当等に充てられます。
(個人再生の場合)
口座名義人(子)の財産だとされた預金は、清算価値として計上することになります。
結果、本来の目的のお金の使い道にはならないため、気持ち的にはマイナスに向きやすい結果となりやすいです。
しかし、自己破産や個人再生では、財産の取扱いが決まっているので、どうしようもないことをご了承ください。
保険契約の場合
親が子を契約者として保険契約をし、保険料を支払っている場合の取り扱いも基本的には預金と同様です。
ただ、保険契約という性質上、以下のとおり、預金以上に個別具体的な事情が存在します。
保険料の出捐者、保険契約の内容(被保険者・受取人・保険金額・保険料・保険期間等)、保険料の支払方法、契約名義人と出捐者との関係、動機や目的、契約締結時の事情、名義人の認識、保険証券及び届出印の保管状況、契約者貸付の有無(有る場合は貸付金の受領者とその使途)等を踏まえて、誰の財産となるのかが判断されます。
つまり、
契約者が親で、子が被保険者である場合は、親の財産となり
契約者も、被保険者も子である場合は、子の財産として判断されることになります。
契約者(子)の財産だとされた保険の取扱い
(自己破産の場合)
その解約返戻金額が一定の金額を超えると、破産財団に組み込まれることになります。
(個人再生の場合)
解約返戻金に相当する金額を清算価値として計上することになります。
解約返戻金のない保険の取扱いについて
掛け捨てタイプの保険や車の保険などの場合は、解約返戻金がないため、誰が契約者であっても問題ありません。
もしも、親が貯めてくれていた口座で借金が完済できたら破産手続きはどうなるのか?
最後に、親が知らないうちに貯めてくれていた預金口座のお陰で、あなたの借金が完済できるとします。
基本的には、親が貯めてくれていた口座は、親の財産ではなく、あなたの財産とカウントされてしまう可能性が高いので、あなたの財産であるという前提でお話します。
その場合、自分が進めていた破産手続きはどうなるのか、気になりますよね。
いろいろと、御の字になるような気もするのですが…
残念ながら、
破産手続きをしたという事実と
100%を支払ったという事実で終わることになります。
破産手続き費用を支払った上に、借金は完済し、破産した事実まで残るという不条理な結果です。
こういったことにならないためにも、言いにくいと言って、親に隠すよりも、親に打ち明けた方が良い場合もあるかもしれません。
ですから、破産手続きをする上では、弁護士が聞き取り調査をしっかりと行うことが大切であり、あなたも隠し事をしたり、言えないと躊躇しないことが大切なことです。
当事務所では、このような事案になることを未然に防ぐために、弁護士が直接相談者の方とやり取りをすることをモットーとしています。
言いにくいこともたくさんあると思いますが、黙っていて大丈夫なことは1つもありませんので、弁護士に打ち明ける勇気を持ってください。